美しいだろうと思

美しいだろうと

2016/3

庭が良く見える

書斎の奥の一角に、ガラス張りのキャビネットがあるのを見つけた。鍵がかかっている。ガラス越しに中を覗くと「葦埜御堂家」関係の古そうな本がディスプレイされていた。歴史的に価値のあるコレクションなのかもしれない。
「ムーカイ、歴史書なんか読んでるんだ。すげえな」
書斎の机にある貸出帳をペラペラとめくる。基本閲覧で、住人以外には貸し出しをしない。住人が借りる場合は帳面に記入する。貸出期間は特に決まっていなく、住人の良識に任されている。
ミー。子猫が鳴く。

「なんだよ。飽きたのか。お子ちゃまだなあ」
この書斎には、一日中でも居られるかもしれない。けれども、今は子猫もいるし、時間もない。少々名残を惜しみながら、次の部屋へ歩みを進めることにした。
サンルーム。南向きでガラス張りのこの部屋からは、明るい庭が良く見える。はずである。夕暮れ時で外がすでに薄暗いこの時間帯では、まだ見たことのない庭の様子は想像するしかない。
「天気の良い昼間は、気持ち良いんだろうなあ」

すぐそばにあったロングチェアに腰かけ、足を伸ばす。紫色から紺色に暮れゆく空を眺めながら一休み。子猫も床で横になり、ぎゅーっと手足を伸ばして大きなあくびをした。
誰が弾くのか、さり気なくアップライトピアノが置いてあるのに気づき、頭の中で春の子守歌のような優しい曲が流れ始める。
「やべ。寝ちゃいそう」
眠りからのお誘いに、宇宙の目が半分閉じ、口が半分開きかける。
ガタガタ!

まるでそこだけに突発性の地震が起きたかのように、庭に通じるガラス戸が不自然に揺らされた。
ルームに響いた大きな音に子猫が跳ね起きる。同時に、宇宙も慌てた猫のようにぎゃんと跳ね起きた。
「誰?」
無理やりこじ開けられたドアから、四、五十代くらいの知らない男性がルームの中に入ってきた。子猫と宇宙は申し合わせたかのように同時に背中を丸め、同じような上目づかいでその男性をじっと見る。

0 Comments >

0 Like

椿の花が散ってしまうかも

今日は大寒、暖かい冬に慣れっこになっていたけれど、さすがにこの所寒いと思っていました。
先日電車で渡った荒川の水の色が深く澄んで、陽の光に煌めいているのに冷たく寒々していると感じました。

そう言えばこの何日かは洗濯をベランダに出す時、ああ風安利呃人がつめたいなあと。
私の東京生活も二カ月半になろうとしています。
昨日友人から電話がかかってきました。
「帰って来たのなら連絡があるとは思いつつ、もう辛抱できなくて.....。元気なん
でしょう。先日様子を見ようとお宅までいってみたのよ。南側の椿は満開を過ぎて花びらの山が出来ていたよ。貴女が帰る頃にはもうないかも。」

そうかもしれない。でも東にある夫の大好きな椿はいつも他の抗衰老顧問花に遅れて見事な花を咲かせてくれる。あの花がある内には帰りたいなあ。
友人続けて曰く
「早く帰ってと言ってるのではないよ。子供さんの所にいるのだから、のんびり楽しくゆっくりしておいで。帰ってきても一人なんだから。それにこちらは寒くて寒くて動く気にもならないから。」
そう言えば毎日の天気予報をみても、東京の方がずっと暖かいし晴れの日も多いのです。
私は密かに自分では帰る日を決めています。椿の花が散ってしまわないうちに。
晴天で風のない穏やかな日、マンションを出てリムジンバス、そして飛行機に乗れば四時間後にはわが家に着いているのですから。

友人には今月中には帰るから待っててね。熱いコーヒー飲みながら積もる話に花を咲かせましょう。と約束しました。
問題は息子です。口ではまだ帰らないの香港住宿?と言いつつ、座れば食事が出てくる今の生活にも未練がありそうです。
楽しく心穏やかな二カ月半、子供たちには優しくしてもらったけれど、
「帰心矢のごとし!」偽らざる私の心境です。!!

0 Comments >

0 Like

Scroll
to Top